新年をことほぐ「菱葩餅 (はなびらもち)」

皆さま明けましておめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願いいたします

さて。
睦月(むつき)のお菓子は..
新年をことほぐ「菱葩餅 (はなびらもち)」

由緒正しき御菓子でございます。
お正月にどちらかで見かけた方もいらっしゃるのではないでしょうか。




新春は少し畏まって
花びら餅の源流として知られる
川端道喜「御菱葩 (おんひしはなびら)」をご紹介いたします。

※ついてきてね〜♡



平安時代から伝わる新年の宮中行事
「歯固めの儀」

固いものを食べて長寿を願うという儀式でいただく
「菱葩 (ひしはなびら)」は
御所用に制作された鏡餅が元とされています。


鏡餅といえば、
三宝に餅を二つ、三つかさねて
昆布のうえに橙をのせる
昭和の時代には定番の床飾りでしたね。


住環境の変化とともに簡略化が進んでいるように感じますが

お正月になると日本料理店のエントランスに
華々しく飾られていたり
今年もご家庭にご用意された方いらっしゃるのではないでしょうか。


御定式御用品雛形


京都 川端家に伝わる
宮中行事の御用品を記した
『御定式御用品雛形』という絵巻物

三宝の上にウラジロを敷き
白い鏡餅1枚と赤い鏡餅1枚をのせて

その上に薄い丸餅12枚、
さらに赤い菱餅12枚昆布、
ほんだわら (海草)、
串柿2本を左右に垂らし

砂金袋型の餅と伊勢海老とを水引でくくって飾ります。

まわりに柚子、
橙など果実を配置するという非常に華やかなもの。


こちらが次第に簡素化して、
江戸時代の初期には宮中雑煮として親しまれるようになったそうです。

「宮中雑煮」とは、
また馴染みのない言葉になりますが
これは汁のない、包む雑煮というイメージでお願いします^^

三宝の上に
十二枚の丸餅と菱餅を重ねて
歯固めの儀で用いる押し味噌や飴、
大根や瓜、鮎の塩漬けなどを
この薄い餅を器代わりにするようにしてのせていただいていくそうです。

円 (まる)くのした餅は
梅の花びらを表しているため
「葩餅 (はなびらもち)」と呼ばれるのだとか。

梅の丸い花びらを思いほっこりしませんか。


これがさらに簡略されこの鮎の塩漬けは、
蜜煮したゴボウで代用され
餅に包んでいただくようになりました。


なるほどなるほど^^




これが発案されたのが
明治維新の頃
裏千家の11代目 玄々斎宗匠は、

御所への出入りをしていたなかでこの
「菱葩餅」を目にされたそうです。


そこで川端道喜に依頼し
12代目道喜が試行錯誤の末に現在の製法をあみだして
いまも裏千家初釜のお菓子となっているそうです。



いまではお正月の餅菓子として知られ
多くの和菓子屋さんで「花びら餅」として作られています。


このように由緒正しき花びら餅ですが

千家流でも、
他流派では初釜に花びら餅はいただきません。

わたしは学生時代裏千家に学んでいた時期があり
花びら餅には殊更思い入れが強いように感じていて
日枝神社への初詣帰りに

赤坂 塩野さんにて
「菱葩餅 (はなびらもち)」をほぼ毎年欠かすことなく求めています。

なぜって年始は2日から1月いっぱいまで販売されているから♡

【御菓子司 塩野】
https://www.shiono.net/



価格も幾度となく改定され
そして結婚してからも毎年毎年その美味しさに感動しています。

同じお店の季節の和菓子を
こうして長くいただくこともお菓子をいただく愉しみのひとつですね♡



ちなみに
川端道喜「御菱葩」をお求めになりたい方は
年末のほんの数日間、
お試しに作った「試餅 (こころみもち)」として、

裏千家ではない一般のお客様に販売されています。
※銘を区別していますが、同じものです

12月1日からほんの数日間、電話予約にて受け付けています。

そして年末12月27日から29日のみの受け取りという!


京都本店に立ち寄らない限りは求められませんので、
なかなか手に届きにくいうえに
賞味期限は、購入日当日限りという!笑

とはいえ、
他の追随を許さないその驚きの味覚を
一度は召し上がっていただきたいです。

【川端道喜】
http://www.kyomeibutuhyakumikai.jp/shop/chimakikawabata.html



由緒正しきお茶のお菓子は
意外なほど控えめなものですが
それは一服の抹茶をひきたてるためのもの
後で味わうお茶が主であるという分をわきまえている..

改めて裏千家大宗匠のお言葉がこころに沁みます。

「ほのかな灯りのお茶席で他の茶道具同様、
目立ちすぎないようにある道喜のお菓子は、
芸術作品のようなお菓子とは違うということをよくわきまえている」



参考図書:
『和菓子の京都』川端道喜著/岩波新書
『日本庶民生活史料集成 第23巻「三條家奥向恒例年中行事」』三一書房




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《プロフィール》
冨田尚子 
テーブル茶道家横浜生まれ。
交換留学での異文化交流を機に、日本文化を伝える大切さを学ぶ。
広告制作でフードコーディネーターとして商品企画担当。
表千家茶道、テーブル茶道を深めるなか、抹茶講師資格取得。
お抹茶ナビゲーター資格取得。
「暮らしのなかで愉しむお抹茶」をコンセプトに、
テーブル茶道を国内外に広くお伝えすべく、2017年お抹茶コミュニケーションSUI設立。
白金台キッチンサロンにて、抹茶講師養成セミナー、お抹茶飲みくらべ体験セミナー、
キッズワークショップなど、国内外1000名以上の方にテーブル茶道をお伝えする。
海外9か国からご受講いただく。
2017年キャピトル東急にて外資系企業セミナーのティーブレイク抹茶スタッフ担当。
2018年日本橋三越本店にて親子向け講座、
2019年日本橋三越本店にて1-3 月期継続講座登壇。
現イタリア大使夫人にプライベートレッスン、イタリア大使館主催/伊藤園協賛の日本文化セミナー登壇。
いけばなインターナショナル2019 カジュアル茶席を催し、
高円宮妃殿下の御臨席賜る。
2019年 2020年 オンワード樫山 webモデル。
家庭画報特選 2020年 きものサロン春夏号に取材記事掲載。