パリ 百年建築で知る、表と裏2つの【区別】

百年建築で知る、表と裏2つの【区別】

みなさま、こんにちは!
フランスパリ在住、美たしなみマナーコンサルタント金澤優子です。



『日本は、世界で最も公平な国です。』  

これは、イギリス在住当時、フィニッシングスクールに通いだした頃、
なんども校長から言われ、衝撃を受けた言葉。



古い言葉ではあるものの、
未だ世界から見れば【一億総中流社会】傾向の残る日本では、

平社員でも社長でも芸能人でも、
【平等、公平であることが当たり前】の意識があり、

自分が【どこの階級にいるか?】ということを考える機会は、
そうは多くない。



今回お話しすることは、
【差別】ではなく、あくまでも【区別】の話。


シリーズでお届けします。



『そろそろ、そんな時間なのだわ』
ということを、

私はいつも『彼女』の声とゴミ袋のガサガサ音で、知ることができる。


自営業である私は、
一日のうちの多くの時間をこの家のはずれにある
小さな書斎で過ごしており、

この書斎は、この築百年アパルトマンの隣人であるおばあさん宅の【裏口】に面しているので、
お昼が近づくと、バターやスパイスなどのなんとも言えない良い香りが漂い、
うっとりさせられるのが私の日課。



そして、
ほどなくして、『彼女』は、隣家の裏口を開け、
薄暗くて粗末な裏階段をガサガサ、ゴミ袋の音を立てながら、
降りてゆく。

いつも決まった時間に。



『彼女』は、隣家のメイドさん。


ここフランスでは、一般の家庭であっても、
メイドを雇うことは珍しくなく、
高齢者の家庭でメイドを雇うことは、割と普通のこと。

隣家のメイドである『彼女』は、毎朝通ってきては、
美味そうな匂いのする食事を作り、ゴミを捨てながら帰宅する。



ただ、大きく日本と違うことは、
メイドたちは、私たち居住者が通常使わない、
粗末な【裏階段と裏口しか使えない】ということ。

隣家の「彼女」メイドが毎朝使っている裏通路



これは、フランスだけではなく、
アメリカでもマレーシアでも同じで、

多くの住居には、入口も階段(エレベーター)も『表用』『裏用』と2種類あり、
メイド、メンテナンス、その家のために『働く人』は、『表口』を使うことは許されない。


ベビーシッターやナニー、家庭教師も、
『裏口』を使うよう言われることもある。


『表用』と『裏用』とでは、全く様相が異なり、
『裏用』は、見ているだけで気持ちが荒みそうなほど、暗くてみすぼらしい。




玄関にパルテノン神殿のような美しい円柱を持つ、
この住まいに引っ越してきた時、

最も驚いたことは、
『表の玄関からゴミ出しをしてはいけない』というルール。

表玄関を入ったところ



指定されたゴミ捨て場に通じる裏口通路は、
罰ゲームだとしか思えないくらい、薄暗く狭く、
無骨な配線がむき出しで、

霊感の強い人なら『ナニか見えそうなほど』陰気。

裏口通路



地下に降りると、
コンクリート舗装すらされていない土の部分もあり、
洞窟の中かと思うほど暗い。


粗末なハダカ電球を頼りに、長い廊下をひた歩くも、
フランスではありがちなタイマー式電気では、すぐに切れてしまい、
下手をすると真っ暗闇!にすらなり、
それはちょっとしたパニック!

「カーブ」と呼ばれる地下物置に続く通路。土がむき出し
おそらくはメイド用のトイレ(今は使われていない様子)


そんなわけで、わたしひとりでゴミ捨てに行くことは、
もはや不可能に思えた。

しかし、
このアパルトマンのオーナー、
3人の子を持つワーママ、セリーヌは平然とこう言ってのけた。


『あら、大した問題じゃないわ。
ゴミは、家政婦か、さもなくば、子供が捨てにゆくものでしょ。』


【家事と雑事は、女主人(主婦)の仕事】
という概念は、この国では日本よりずっと弱い。

(次回に続きます)






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【プロフィール】金澤優子
『外国語にも海外にも無縁』のOL生活から一変、
英国フランス米国マレーシアを『サーカスのように移動生活』をする中で、
なぜ日本人が誤解されたり、バカにされてしまうのか?を知り、
『振る舞いを変えるだけで、扱われ方がガラリと変わる』という衝撃を受ける。
現在、世界12カ国以上から年間600人以上が受講する
『美たしなみマナー&コミュニケーション』をフランスからお届けしています。

コラムでは、40過ぎから最終ステージに向かう私たち女性が身につけたい
『世界のどこでも、誰からも選ばれる、美たしなみの秘訣、海外での生活』についてお届けしてまいります。
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