第5話 北風と太陽

このコラムは私と若年性認知症を患った母の10年をつづります。

これまでのコラム▼
第1話 いちばん縁遠い人のはずだった
第2話 怒り
第3話 手帳
第4話 敵を知る



令和に入ってから始まった祝日、(2月23日の天皇誕生日)
本日のお休みは皆様、いかがお過ごしですか? 

私は看護師として出勤して参りました^^


医療者ですので、
祝日は仕事の休みに関係ないことは昔からのことですが

みんなと同じ日に休みたいなぁと 
思ったりもします^^





でも、介護をしていた時には 

土日も祝日もありませんでした。



介護に休みがないからです。 



施設に入所していない場合、
家族が見守らなければなりません。


日中、看てもらえるデイサービスはありがたくても
仕事をして疲れて帰ると介護の始まりで 

疲れが取れない日々です。


認知症が軽症な時は  
大変なことも多いのですが 
(別の機会になぜ大変なのか綴りますね)

デイサービスを毎日利用できないことが多いのです。





デイサービス以外の日は 
今は母は大丈夫かな?という心配や不安にかられ 

精神的に疲れることも多々ありましたし、


母からの電話が鳴り続けて
携帯の履歴がすべて母になった日もありました。


今となっては、 
母は私に電話ができなくなりましたし  
私を娘だと認識できなくなってしまったので 

「なつみちゃん」と

私を呼びかける留守番電話に残る母の声を聴くと、 

疎ましく思っていた電話だったはずなのに

母に名前を読んでもらえることが
こんなにも嬉しい事だったんだと目頭が熱くなります^^ 





介護者に休みはないので、
身体的にも精神的にもほとほと疲れます。


ですので、
介護する時には頼れるものには頼ることが本当に大切です。


①病院にかかること
②介護認定を受けること


この2つは必ず必要です。



でも、この2つをクリアするのはとても大変です。


なぜなら…

”認知症患者は症状の自覚がないから”です。




普通、お腹が痛い、頭が痛いなど 
具合が悪ければ病院へ行きますよね。


でも、認知症患者さんは  
物忘れをしている自覚がありませんから 
病院へ行こうと誘うと


「何も問題はないのになぜ 
病院へ行かないといけないの?」

「私のことを病人扱いしないで!」

「バカにしないで!」


と反応されます。


物忘れの証拠を突きつけても
自分を認知症患者扱いされていることに
さらに立腹させてしまうだけです。



ですので、正論を突きつけるのは得策ではありません。


伝える時に大切なことは
『あなたを大切に思っているから病院に行こう』という想いを
ちゃんと口に出して言うことです。



「お父さんを心配に想っているから  
病院に行って欲しいよ。」

「お母さんにはこれからも一緒に旅行をしたり  
遊びに行ったり、元気でいて欲しいと  
思ってるよ。」

「大丈夫っていうハンコをもらいに  
行ってこよう!」


そんな風に温かくて、
前向きな言葉で病院に誘って欲しいと思います。



”北風と太陽”を思い出してくださいね。




そして、
必ず突き放さずに

「一緒に行こう。」

「私も付き添うから大丈夫だよ。」

そんな風に声を掛けてあげてください。



「私は大丈夫よ!」と強がっていても
どこかで本人も不安だからこそ強がることがあります。


その強がりな言葉は自分を守るための”防御”ですから
恐いんだな、不安なんだな、心配なんだなと
本当の気持ちに寄り添ってあげてください。


「恐いよね。私もお母さんの立場だった 
恐いし、子どもから病人扱いされたら  
とても嫌だと思う。 

でも、私はお母さんのことが大事で、 
これからも元気でいて欲しいから 
少しのことでも病院に一緒に行きたいと  
思っているよ。 

お母さんが嫌がることはこれ以上、 
私も言いたくないけど。」



聞き入れてもらえない日もあるでしょうけれど
聞き入れてもらえる日もあるはずです。


「そう。そこまで言ってくれるなら‥」

と言葉が聞かれたら成功!ではありませんよ!!!

油断なりませんよ!!!



認知症ですから聞いたこと言ったことは忘れますからね^^

「ありがとう!!」と抱きしめた後にすることは

サッと手帳を開くことです!!!!



・いつ
・何時に
・どこの病院へ行くか

チャチャっと書きましょう!


下準備は大切です。
病院は調べておきましょう!


普段かかっている病院があれば
その病院に相談してみて
つながりのある先生を紹介していただいたり

地域の区役所や、
どの市区町村にもある
地域包括支援センターに連絡をとり相談してみてくださいね。


予定を立てたという証拠をちゃんと残しましょう。

そして、そのあとは日々感謝の言葉で満たします!!


「病院に行くことを決めてくれて 
本当にありがとう!」

「心配を早くなくそうね!」


「当日は病院の前にあそこで 
お茶してから行こうか?」


ありがとうのオンパレードです! 


そして、他の家族とも 
口裏を合わせましょう!



「病院に行ってくれるって聞いたよ。 
嫌がっていたのに、ありがとうね!」

「私も一緒に行こうか?」


みんなに感謝されたら行くしかありませんから^^



当日、行き渋ることもありますから
まだまだ油断なりませんがまずはここからです!


「お父さんが大事だから」
「お母さんが大切だから」
「ありがとう。」
「不安だよね。でも私がいるよ。」


どうか温かい言葉で病院への道を切り開いてください。


あなたが今、パートナーやお子さんから

「病院に行ってきた方がいいよ!」と
急に言われたらを想像して

どんな言葉をかけてもらったら病院に行く気持ちになるか 
考えてみてもいいかもしれません^^



かたくなにさせないであげてくださいね。
頑固にさせないであげてくださいね。


何度言っても聞いてもらえない悲しさ、怒り、どうしようもなさ
「もう知らない!」と言いたくなる気持ちにもなると思います。


優しくしたいのに優しくなれない。
私も体験しています。



その場限りの演技でもいいんです。

だって、”病院へ行ってもらう”という目的を達成するための作戦です!!
割り切って、ひとつ、芝居を打ちましょう^^


いざ!病院へ!頑張ってください! 
応援しています!!






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《プロフィール》
竹内なつみ

神奈川県横浜市で育ち 
3歳上の頭の切れる姉と喧嘩することなく、
ぬくぬくと甘えさせられて育つ。
母が40代前半で生死をさまよう手術をした経験から、
表情や顔色、会話の雰囲気などの変化に気付けるようになり、
身近な人を守りたいと看護師を目指す。
日本赤十字看護大学にて看護師・保健師の資格を取得後、
脳神経外科専門病院にて勤務。
急性期病棟にて経験を積む。
その後、看護を学ぶため、大学院修士課程へ進学。
病院入院中の患者を観察やインタビューなどから、
患者について深く学ぶ。
観察力、分析力、文章力を評価され、博士課程へ進む。
博士課程在学中、ワンオペ育児、介護で忙殺され、途中退学する。
現在は、とにかく明るい性教育「パンツの教室」インストラクターとして活動中。
活動開始より半年で70名、1年で130名以上の方へ伝えている。