第11話 そびえ立つ高いハードル

こんにちは。
竹内なつみです。

認知症となった母との10年の歩みと
脳神経外科専門病院で勤務した経験、保健師の知識も盛り込み、
認知症や介護に関する情報をお伝えしています。



これまでのコラム▼
第1話 いちばん縁遠い人のはずだった
第2話 怒り
第3話 手帳
第4話 敵を知る
第5話 北風と太陽
第6話 認知症の診断
第7話 認知症の予防
第8話 着地しない心の疲れ
第9話 介護費用のホントの話
第10話 施設入所のタイミング


本日は、施設入所やデイサービスを利用する時の心のハードルを 
少しでも低くしたいと思いコラムを綴らせていただきました。





母が認知症疑いとなってから10年。



家を出て、電車やバスに乗って目的地とは違う場所へ向かってしまい、 
帰宅できなくなることが度々続きました。



定年退職をしたばかりの父は生活の変化はもちろん、 
母のサポートに疲れ果て
私も2歳と5歳を育てながらの生活の中の介護に息切れをしていました。




良いデイサービスと出会えて
今の生活をできるだけ続けさせてあげたいけれど、
徘徊で行方不明になって、一生会えないことになったら、  
交通事故などで命を落とすことになったらそれこそ一生後悔をする。



それが施設入所を決めた決め手でした。



デイサービスまでは心配ながらも送り出せましたが 
施設入所に限っては、 

「私は母に恨まれる」 

正直なところ、そう思っていました。



母を家から勝手に引き離すこと
大好きな愛犬と会えなくさせること
知らない人の中で生活させること  



認知症になってただでさえ不安な毎日なのに、 
さらに不安なことを押し付けることへの抵抗。





それは、私にとってエベレストのごとく 
心の中にそびえ立つ施設へのハードルでした。




施設入所までは家庭によってさまざまなルートがあります。



デイサービス2〜3日から始まり 
デイサービス5日利用へデイサービスだけでは 
家族がしんどくなってきた場合、  
ショートステイといって施設で短期間宿泊してもらったりします。 



それを長く続ける方もいれば 
ショートステイをきっかけに施設入所へ繋がる方もいます。 



ショートステイは、
本人の拒否が強く利用が難しい場合が多いのですが、 
施設を変えることによってスムーズな利用ができることもあるそうです。



ショートステイは介護者にとって、入所への心の準備ができますし、 
施設の体験入所としての役割も担います。 




ちなみに、当事者にとっては、
その体験は後にはすっかりと忘れてしまうことですが、 
嫌だった、楽しかったという感覚だけは残ることがあります。 




そのような情報を私は”家族会”から主に得ていました。 




認知症には家族会という介護をしている家族の集まりがいくつかあり、 
地域の家族会もあれば、病院によっては病院主催の家族会もあります。 




ちなみに、
家族会は認知症だけでなくがんや難病などの病も設けられています。




ネットや本は良い情報源ですが、
やはり生の声の情報は確かさが違います。 




施設のハード面 
スタッフの人柄などソフト面 
家族との連絡の密さなど 
デイサービスや施設によって全く異なります。



一般的な良し悪しはありますが、 
介護者、当事者の人柄はそれぞれ違いますから   
誰かにとって合わなくてもピースがパチリと合うこともあります。




私も隔月で開催される病院主催の家族会には出席して、
新薬の治験の話や評判の良い施設やデイサービス、 
母より進行が少し進んだ方の話を積極的に聞いて、色々と備えていました。 




また、区役所などにも施設やデイサービスの情報が多くあります。  
わざわざ面倒かと思いますが、時折のぞくと良い情報が入ってきます。 




65歳以下で入ることができて、体力を維持させてくれるような 
活動的なデイサービスを見つけられたのは区役所のおかげでした。





介護は1人で抱え込みがちです。 




そして、段々と病状が進むのに「あと少しなら頑張れる…」と 
介護者がひと手間、またひと手間と少しずつ負担を増やしてしまいます。 




負担が増えるとなくなるものは

心と時間の余裕=笑顔やユニークさです。 




介護者も当事者もお互いが笑顔でいられる時間を増やすために
生活や環境を変えることを、悪いことに思ったり、
罪悪感に苛まれないで欲しいと、私は思います。 





まず情報を収集してみましょう!
とりあえず、やってみましょう!
合わなかったら 別の場所を試しましょう! 




新しい道が少しでも開けると閉塞感から解放されます。




今回は施設入所の”その時”をお伝えする予定でしたのにごめんなさい!  
日本人は特に介護に誰かの手を入れることや 
施設への入所にハードルを高く感じやすいので、  
少しでもハードルをできればと思いました。

来月は、”その時”のお話をさせて下さい。
では、また来月! 

▶︎過去のコラムはこちら
https://rdoor-official.com/category/column/takeuchinatsumi/




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【プロフィール】
竹内なつみ
保健師資格を有する看護師。
脳神経外科専門病院、超急性期・急性期にて勤務後、
看護とは何か、患者さんの体の変調に伴う感情の変化を研究すべく、大学院へ進学。
修士課程卒業、博士課程中退。
大学院入学と共に、実母の認知症状が現れ始め、
学業、仕事、ワンオペ育児と介護に奮闘する。
現在は、看護師として勤務しつつ、ミセスコミュニティーR-door副代表を務める。